小説「絶対正義」登場人物やあらすじ、魅力などを解説します

小説「絶対正義」は、秋吉理香子の、ミステリー作品ですが、テレビドラマとしても人気でした。その内容とはどんなものなのか、順を追って書いていきたいと思います

作者について

秋吉理香子….兵庫県生まれ、早稲田大学卒業後、ロヨラ.メリーマウント大学院にて映画、テレビ制作修士号を取得。2008年、「雪の花」で第三回yahoo.japan文学賞を受賞、デビューしました。

代表作に「暗黒女子」「聖母」「ガラスの殺意」などがあります。

本作品はテレビドラマで放送され、大変人気のある作品です。

女子高校生のありがちな仲良しグループへある日一人の転校生が加わります。

ありきたりの仲良しグループがその少女の登場により、奔走され、闇に飲み込まれていくような、ノンストップサスペンスです。目次

登場人物、その関係性からなる、タイトルへの繋がり

物語は、「今村和樹」へと届いた一通の手紙から始まります。

そこへ届いたのはかつての同級生「高槻範子」からのものでした、

物語の中には、この二人の他に「西山由美子」「理穂ウイリアムズ」「石村麗香」そして範子の娘の「高槻律子」が主な登場人物として存在しています。

律子の他は全て範子の高校時代の仲良しグループの同級生で、範子以外の仲間で成り立っていたこの関係に転校生である範子が入ってしまうのです。

しまうのです。という書き方をしたのはこの後、彼女たちは範子を仲間にしたことをとても後悔していくわけで、それは何故かというと、範子が何かにつけ、間違っていることに厳しく批判をするようになるからです。

タイトルの「絶対正義」という言葉の通り、曲がったことの大嫌いな範子は自分が正しいと判断したことには手を緩めません。

しかし口にしていることは確かに間違っていないので、間違っていないからこその「絶対正義」にどんどんと呑まれて行って、さらに、その彼女たちの嫌悪感が、やがて恐怖へと変化していくのです。

主人公範子の生い立ちや、特徴は?

範子は高校の時に転校生としてやってきますが、その前には自分の母親が事故で亡くなっています。

親の転勤という理由での転校のように書かれていますが、後に範子の母親が、自分の意志を通そうとする範子を追いかけて事故にあって死んでしまったことから、彼女の性格や考えに変化が現れたような描写があります。

範子の娘の律子も同じように女子高校生で、自分の自由意志が芽生え始めた頃ですが、その姿と昔の範子をシンクロさせているような表現があることから、範子は普通の高校生だったにもかかわらず、正義をかざす母親の「死」を目の当たりにすることによって、その「死」が自分の責任だと強く認識してしまったことからこのような人間になったようです。

範子の娘、律子が普通の高校生のように育っていながら、「正義」を振りかざす範子のことを冷めた目で見て、言いなりになっているフリをしているところは、現代の女子高校生の姿らしいと思いました。

範子は曲がったことの嫌いな性格と書かれています。

そのスタイルは前髪が一直線に眉の上で切りそろえられ、髪の毛もストレート。洋服はいつも白。などどこまでも真っ直ぐなイメージで書かれています。

周りにこのスタイルの人がいたなら、きっと馴染みにくいという印象になりそうです。

範子の生き方と、正義について

範子が自分にも厳しく周りにも厳しいのですが、どのくらい厳しい「正義」なのかというと

私たちがついうっかりとやってしまうような小さな過ちとでも言いましょうか、例えば、学校の風紀委員の服装検査などで、体型が変わったためにスカート丈が2センチほど短くなってしまった和樹のことを、風紀委員が見逃したが、そばで見ていた範子は定規まで持ち出してきっちり測り、丈が校則違反と発言するところや、タバコを見逃した先生を警察に告発するなど、

「見逃す」ことは間違っていないのだが、そこには人としての「情け」のようなものがあっての行為のため、普通なら人はそこに傾くことを「悪」としないのに、範子は許せないのです。

「私間違ってる?」というのが彼女の口癖なのだけれど、間違っていないけれど、やり過ぎではないのだろうか。だんだん周りはそんな感情に悩まされていくのでした。

範子の母親がそうであったように、「間違ってはいないけれど」という言葉が出てしまうような「正義」で、この話の中には世直しヒーローのような爽快感のある「正義」ではないところが、恐怖に感じて行きます。

どうしてかというと、反論のできない「正義」のために、いつ自分もその「正義」に巻き込まれ、当事者にされるかもという気持ちが強まるからです。

死んだ母親の影響という形であるけれど、その意に報いるようにどんな小さな間違いも見逃すまいという姿が範子の生き方なのでしょう。

同級生同士の関係性の深さと、巻き込まれていく人々

範子と同級生の関係は初めは範子自身弱い立場でした、

転校してきて、馴染めていない範子を可哀想だからと引き入れたのは、西山由美子で、卒業するまでの間は少しの「正義感」を不審に感じていたものの、学生時代は終了します。

物語が再び動き出すのは15年後の同窓会。

懐かしさからまた時折連絡を取り合うことになったからでした。

2ヶ月に一回行われるランチ会は初めの頃こそ楽しかったものの、範子の正義感は大人へ向けられると常識の範疇を超えるものが多く、やがて、また、同級生たちは彼女を疎ましく思うようになって行きます。

範子は専業主婦になっていました。

冒頭で登場する和樹はジャーナリスト。由美子は働かない夫に悩む主婦。

里穂は外国人と結婚して塾を経営するなど豊かに暮らしつつ、子供ができない悩みを抱えていました。

麗香は女優の端くれだけれども、プロデユーサーと不倫をしている身です。

卒業して何十年も経てば、それぞれ人生にはいろいろなことがあり、誰にもそれを避難することはできないと思いますけれど、範子は変わることなく自分の正義を押し付けてくるようになりました。

ジャーナリストの和樹は記事にする取材のために嘘をついて情報を引き出したり、女優の麗香は不倫、子供のできない里穂の悩みの解決、由美子の働かない夫問題など、ランチ会で表面化していく同級生たちの生き方に、正義のヒーローの如く、解決してあげようとする範子が行動を起こしてくのです。

私が解決してあげると言われればつい頼りになると思いがちで、この4人も初めは範子が頼もしく見えたのでしょう。

不倫の麗香には公にすることで、「正義」を教え、女優の道を閉ざし、由美子は夫婦喧嘩の際につい子供に怪我をさせたことを虐待だと通報し、子供から隔離されてしまいます。

子供のいない里穂には自分の卵子を提供するという提案をしますが、倫理的にも生理的にも普通では嫌悪感を抱きますよね。たとえ友達だとしても。

和樹は取材の不当な情報入手を暴かれたことでライターとしての名誉を失ってしまいます。

そうやって、平和にそれなりに暮らしていた彼女たちは大切なものを失っていくという恐怖に巻き込まれて行きました。

何度も聞かれる「私間違ってる?」という言葉の通り、間違ってはいないけれど納得のできない結末にどうやって終止符を打つのでしょうか?

「正義」とはなんなのか、範子の正義と、周りの正義について

テレビ番組の戦隊モノや、弁護士のドラマなど、世の中には悪いやつをこらしめたり、間違いを正す作品数多くあります。

その瞬間なんとも言えない爽快感があるものです。

「水戸黄門」などのラストなどがいい例ですね。

範子は正義感の強い女性です。

正義感はとても大切なものですが、何故、同級生たちと範子の正義感に差があるのでしょうか?

それは、範子の正義には感情が入っていないからだと思います。

私たちは日頃つまらないミスをたくさん犯して行きますが、相手に、ミスを犯した人への情けやいたわりの心などがあれば、そこを「見過ごし」てみたり、見ないことにしてみたり、各々の折り合いの付け方があると思うのです。

そこで「正義」を振りかざしても、心情的にはどうなの?

ということになると貫き通すことが必ずしも本人のためにならないこともあるわけで、範子にはその部分が確実に欠如していると言えるかもしれません。

間違ってはいないけれど、何か違わない?と同級生たちがだんだんと疑問に思っていくのは、当然の感情で、何故なら私たちは怒る時も、泣く時も「感情」に押されて動くことが多いからですね。

感情のない「正義感」だから、気持ちの悪い感情が出て、周りが馴染めないのだと思います。

「絶対正義」の意味するところ

タイトルになっている「絶対正義」これの意味するところはなんなのでしょうか?

正義感は誰でも持っているし、それは違うよね。というときに注意したり、話し合ったりして、折り合いをつけて生きていくのが普通の人間関係です。

「絶対正義」のように「絶対」という言葉が入ることで作者の秋吉は、ねじ曲げられない部分を強調している感じを受けました。

ねじ曲げない正義。それは、言い換えれば、押し通す正義であって、実は正義の名を語った、イジメに近い感情を現したかったのかもしれません。

結局のところこの物語が最後どうなるのかは、はっきりと書きませんが、キーポイントとなる娘の律子の言葉が、深く残酷な感情として書かれています。

範子のような人は、社会に全くいないとは考えにくく、少数派としても存在しているような気がします。

こういう人っているんだろうね、とかこういう人いるよなあと思えるから、この小説は怖いのでしょう。

読者の評価、口コミ

読者の評価は、大抵が、単純に面白かったというものから、気分が悪い、そこまでしなくても、という、否定的なものまで様々ありました。

否定的な評価でありながら、それでも面白いと感じるのは、日常的にありがちで、巻き込まれていく人たちの恐怖の感情を共有できるところかもしれません。

自分は安全圏にいながら、物語の中で繰り広げられる恐怖を感じるのは、読後感はすっきりしなくても、「面白かった」という評価になるようです。

これが「イヤミス」の醍醐味であり、秋吉は「イヤミスの女王」と言われている作家なので、人気が高いのだと思います。

まとめ

今回は秋吉理香子の「絶対正義」について描いてみました。

彼女の作品は「イヤミス」と言われるだけの事はあって、決してハッピーエンドにはなりません。

本を読んだり、映画を見たりしたときに、楽しい気分や、爽快感がある作品を好むところですが、わざわざ嫌な気分になる小説というカテゴリーは私たちにとって微妙なスパイスのようなものです。

ラストについてはほんの少しだけ触れましたが、この作品の一番衝撃を受ける部分なので、是非、自身で体験、確かめて欲しいと思います。

正義とはなんなのかという疑問から、最後まで、一気に走り抜けるこの作品は読者を飽きさせる事なく、「イヤミス」の世界に引き込んでいきます。

「絶対正義」あなたの正義はこれに当てはまるのでしょうか?

ノンストップで読める作品です。

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